Trente et Quarante

第二話:穢された玉座/4

 ルミエールが森を抜けると、宣言通りソレイユが彼女の帰りを待っていた。
 落ち込んでいるのではないかとソレイユは思っていたが、想像より普通にしている彼女に安堵する。
 ルミエールは彼の姿を見初めると少し早足になった。
「ありがとうソレイユ」
「別に、礼など不要です……」
 やんわりと微笑む彼女を見て、ソレイユの頬に少し赤みが差した。
 ルミエールは熱があるのかと勘違いすると、彼の額に、そして頬に触れた。
 ソレイユは驚いて「ひっ!?」と変な声をあげると、すぐに真っ赤になった。
「熱はなさそうだけれど、頬がとても冷たいわ……どのくらいここで待っていたの?」
 ルミエールは申し訳なさそうに眉尻を下げ、彼に問う。
「問題ありませんから……っ」
 ソレイユは彼女の手を遠ざけると、首を横に振り否定する。
「なら、いいのだけど……」
 ルミエールは首を傾げ、少し寂しげな顔をした。
「陛下が不在だったので……早めに迎えに来ただけです」
 ソレイユは彼女の態度に困惑すると、観念したように言う。
「お父様が? 珍しいわね……」
 ルミエールは少し驚いたように返した。
 ソレイユは「そうですね」とだけ返すと、何事もなかったかのように手を差し伸べた。
「……帰りましょう、姉上」
「ええ」
 ルミエールは頬と同じように冷えきったソレイユの手を温めるように、自分の手を添えた。

...2012.05.22