Genocide

 これは夏休みの出来事だった。 『ピンポーン』とインターホンの音が聞こえて、私―坂滝 のるんは玄関の覗き穴から外の様子を見た。
 母は今日、夜も仕事でいない、だから扉は極力開けないようにと、そう言われていた。 だけどそこには全身ずぶぬれになっている彼―朝霧 律の姿があった。 雨が降っているこんな夜更けに、傘もささずに私のアパートまで来たようだ。 しかも彼はすごく取り乱していて明らかに様子が可笑しかった。 だから私は扉を開けた。
 「どうしたの律君……?」
声をかけると私の腕を引いて、きつくきつくまるで何かにすがるように抱き締めてきた。 布越しに冷たさが伝わってきて、雨に打たれ思った以上に体温が奪われていると感じた。
「律君すごく冷たいよ……とりあえず中に……」
だけど彼は私の肩に顔を埋め、首を横に振って動こうとしない。 かわりに冷たさに混じった暖かい何かが肩に伝わってきた。 彼は本当に泣いているようだ。
「ねえ、どうしたの?何か悲しい事があったの?」
私は彼を抱き返すとそう聞いた。だけど彼はその問いには答えず、私の肩を掴み顔が見える距離を作った。 彼は相変わらず取り乱した様子で、だけどすごく真剣な表情で私に言った。
「のる……一緒に……どこか遠くに行こう」
「え?」
この瞬間何を言っているのかよくわからなかった。 彼の両親はとても厳しくて、中々遠出もできなかった。 だけど彼は今、『遠くに行こう』と言った。 このただならぬ様子の彼から放たれた言葉、これは遊びに行くとか、そういう程度の話じゃないのだろう。
「どうしたの突然?」
「嫌なんだ……もう、嫌なんだ……っ」
彼は俯いてそう何度も私に訴えた。 だけど一体何の事なのか、今の私には知る由もなくて、戸惑うばかりだった。 その間にも彼の涙は止まる事を知らず、玄関前にできた水溜りにポタポタと零れ落ちる。
「のる、どこか遠くに……僕は、もう……っ」
必死に彼は私と共にどこか遠くに行く事を懇願した。 だけど私はそれには答える事はできない。
「私、お母さんを一人にはできないよ……でも……」
私は彼を裏切ってしまっただろうか、だけどとても大切なこの二人を天秤にはかける事はできなかった。 どちらも大事と思うのはわがままなのだろうか、彼の返事を待ちながら私はそう考えずにはいられなかった。
 「……律君」
私が悲しそうに呼びかけると彼は顔をあげた。 無理矢理作った笑顔を見て私は罪悪感を覚えずにはいられない、だけどこうしか答えられなかった。
「何泣きそうな顔してるんだよ、大丈夫……ちょっと、どうかしてただけ」
彼は最後の方で軽く俯いて言った。
「ごめん、頭冷やしたはずなのに……迷惑かけた」
「迷惑なんか……!」
そう否定しようとする私の口を彼は自分のそれで塞いだ。 触れるだけの軽いものだけど、私は突然の事に顔を真赤にして俯いてしまった。
「気なんてつかわなくていいから、もう帰るよ」
彼は微笑みながら言った。 だけど彼はどこか悲しげで、何か嫌な予感がして、私の肩から離れていく彼の手を取らないといけない気がした。 突然手を取られた彼は首を傾げている。
「……どうしたの?」
今度は本当の微笑み、悲しげな様子はもうない。 悲しげに感じたのは私の気のせいなのだろうか、そう思うと恥かしくなって手を離した。
「ご、ごめん、なんでもないの」
私の慌てぶりに彼は軽く笑っている。 私はますます恥かしくなって赤く熱くなっていく頬を両手で隠した。
「一人で寂しいとか?」
当然そういうつもりで手を取ったわけではなかった。 母はいつもいないから、一人の夜は慣れていた。 だけど彼にそう問われた途端、寂しいような気がした。
「……ねえ律君。そのままじゃ風邪引いちゃうよ、だから、あがっていかない?」
彼はキョトンとしたけど、すぐクスクスと笑った。 びしょびしょの彼をこのまま帰すわけには行かない、この気持ちは本当だったけど、きっと彼にはお見通しなのだろう。
「やっぱり寂しいんだ」
彼はそう言うと、私の頭を優しく撫でた。 冷え切ってるはずなのにどこか暖かい彼の手が嬉しくて、私はまた顔を赤くした。 その赤い顔を見た彼は今度は両手で頬を包んでくれる。
「ほら、のるもこのままじゃ風邪引いちゃうよ」
ニコニコしながら彼は言った。 寒くて赤いのではない事はわかっていて、まるでからかうように、
「じゃああがって?」
「うん、お邪魔します」
私が中へ招くと彼は苦笑いを浮かべながらそう答えた。
 服さえ着替えられればいいと言う彼にシャワーを浴びるよう言って、私は彼の服を探した。 家に一人で居る事が多い私を心配して彼はよく遊びに来てくれる、だから何着かうちに置いてあった。 それを浴室まで持っていって、次に自分の服を取り出した。 しかしどれにするか中々決まらない。 もう寝るだけなのに、それでもできる限り可愛い物を選びたくて必要以上に悩んだ。
 それが済んで他の服を片付けていると、頭をワシャワシャと拭きながら彼が戻ってきた。
「もう遅いし泊まってく?」
「そうしようかな、二人共今日はいないし……それに……」
最後の方は小声で聞き取れなかった私は、それに?と問い掛けた。
「え?あ……何でもないよ」
彼は苦笑すると私の頭を撫でながら抱きしめてくれた。 何を言ったのか気になったけど、私は彼の暖かさに身を任せて、その気持ちを頭の隅に置いてしまった。
 私の知らないところで、彼はどのくらい悩み苦しんでいたのだろう。 あの時彼が呟いた、恨みや憎しみのこもった言葉。 私が聞き取ってあげていたら、彼は思い留まってくれたのだろうか……。

『もうあいつらの望む通りになんてさせない』

01.彼が赤く染まった日

 私の彼氏、朝霧 律はとても有名だった。 頭脳明晰、スポーツ万能、おまけに容姿端麗。 更には有名な大病院の院長の息子、その能力を生かせるほどの裕福な家庭で育った。 そしてそれを決しておごる事はなく、いつも優しかった。
 彼は小さい頃から『神童』と世間にもてはやされていて、他力本願に近い希望、期待という名のプレッシャーの中でそれに応えようと必死だった。 そしてまた、二人の時間を作る為にいつも彼は逃げ回っていた。 私が世間の目に追いまわされないように、いつも一人で全部を背負っていた。
 それに比べて彼女の私、坂滝 のるんは平凡以外に思いつく言葉もない。 成績もあまりよくはなかったし、この学校に来れたのだって、彼が熱心に勉強を教えてくれたお陰だ。 いつも先生との相性は最悪だった。
 それだけじゃない、何故か私は「嘘つき」呼ばわりされていて、周りの目も冷たかった。 身に覚えのない汚名はあっさりと私と周囲の人々の間に境界線を引いていた。

 ホームルームが終わると、彼は足早に外にでていった。 連日やってくる人達を撒く為に私を置いて行く、私はそんな彼の姿を教室の窓から見ている。 校門をでて、その人達の中をかきわけるように歩いていく、そしてすぐ姿は見えなくなる。
 しばらく待つと教室に人気はなくなって、いつも私だけになって、またしばらく待つと、今度は私の携帯が好きなアーティストの着信メロディを奏でてくれる。 私は携帯を取り出し電話にでた。
「もしもし、律君?」
『ちょっと時間かかった。けどもう大丈夫だから、いつもの所で待ってる』
彼は手短に言う。 そして私の返事を合図に電話を切ってしまうから、私は急いで"いつもの所"に向かう。
 都会なのに木々の生い茂る静かな場所、それが私達の言う"いつもの所"だった。 学校からは近くもなく遠くもなく、私の家と彼の家から丁度同じくらいの距離にある場所。 私はキョロキョロと辺りを見回しながら、その静かな場所に入った。
 道がないから草を踏みしめて歩いて行く。 そしてしばらく歩くと小さな小屋、もとい秘密の隠れ家が見えてくる。 以前彼は言っていた。 その小屋は昔仲良くなったおじさんのアトリエで、それを貰ったそうだ。
 入り口の方に回ると、私服に着替えた彼が小屋の入り口に背を預け、空を見つめていた。 私もその横に並んで空を見上げると、それに気付いて彼は視線を私に向けた。
「何を見てたの?」
私は空を見上げたままそう問い掛けた。 すると彼はキョトンとして、口元に手を当て答えを探して眉間に皺を寄せる。 私が不思議に思って彼に視線を落として首を傾げると、彼は困ったように視線を泳がせて言った。
「……空?」
問いを疑問で返した彼に思わず私は笑ってしまった。
「わーらーうーな。そうだよ、ボーッとしてただけ、特に何かを見てた訳じゃない」
彼は恥かしそうに赤くなると顔を背けて腕を組んだ。
 時折彼はボーッとどこか遠くを見つめていた。 考えているような、心を支配されているような、そんな様子だった。 だけどそういう時はすごく敏感で、人の気配を感じるとすぐ普段の彼に戻るのだ。
 小屋の中にはもう使われてないイーゼルやキャンバスが今も置かれている。 そのキャンバスに描かれていたものは描きかけで判らなかったけど、 私はそれを見る度何か懐かしい気持ちになった。 他には簡易ベッドや机ぐらいしかないけど、時間があまりない日はそれで十分だった。
 だけど楽しい時間はあっという間に過ぎていくもので、彼は時間を確認すると立ち上がった。
「のるは五時からバイトだろ?もう行かないと間に合わないよ」
彼はそういうと手首にはめた腕時計を私に見せた。 時計の針は四時四十五分、後十五分しかない。
「もうそんな時間!? 急がなきゃ……!」
私は慌てて椅子にかけていた制服の上着を羽織った。 彼は飽きれたように苦笑していたが、ボタンをとめたのを確認すると鞄を差し出した。
「ほら」
「ありがとう律君」
私は照れながら鞄を受け取った。 そんな私に彼は微笑みかけてくれたけど、どこか元気がないように見えた。
  「どうかしたの律君?」
そう質問すると、彼はいつものようにキョトンとしていた。 多分すごく情けない顔をしてしまったのだろう、だから彼は普段の調子に戻したのだ。 心配した自分が、逆に心配をかけてしまったようで、本当に情けない。
「行こう、店まで送るよ」
彼はそう言って私の手を握った。
「いつまでも暗い顔してるな、僕は大丈夫だから」
その表情は悲しげな微笑みだった。 だけどこれ以上優しい彼を困らせたくなくて、私は今できる一番の笑みで返した。

 それから五時間後、私は街灯の明かりに照らされた夜道をトボトボと歩いていた。 私の日常の一コマ、だけど今日は違った。 『バシャーッ』と水を撒き散らしたような、そんな音が聞こえたのだ。
「こんな時間に水撒き?」
不思議に思って私は音の方向を見てみた。 そこには『立ち入り禁止』と書かれた看板、だけど工事というには少し可笑しな事だらけだった。
 私は看板の先、路地裏へ進んだ。 この不可解な音を無視する事ができなかったからだ。 少し狭い通りを抜けていくと、半壊している建物が視界に入ってきた。 その建物を見上げながら、もし何か怖い事が起きていたら、そう考えると足がすくんだ。
 しばらくそうしていたのだろうか、その建物を見回していた。 すると右側に取り付けられたシャッターが歪み、少しだけ中が覗ける個所を見つけた。 その中には音の原因と思われる何かが落ちていたけど、この暗がりでよくわからなかった。 それはどの角度から覗いても同じで、今度は建物の影に隠れてしまった。
 私はどうしても確認しなければいけない気がして、そっと扉を開いた。 キョロキョロと辺りを見回す、だけど中は静まりかえっていて、誰かいるとは思えない。 私はゆっくりと中へ入っていくと、すぐ右側を見た。 そこは元々ガレージだったのだろう、埃を被ったタイヤが立掛けてあった。 だけど死角になっているのかさっき見えたものは見当たらなかった。 だから私は、ガレージの中へ入った。
 死角になっていた方を振り返ると、私は思わず腰を抜かしてしまった。 『ベチャッ』と嫌な音が響いて制服越しに水のようなものを感じた。 だけどそんな事は気にもできない、恐怖に身体がガタガタと震え、とめどなく涙が零れ落ちる。
「ひっ……いやあぁぁぁ……っ!!」
私は気が動転して身を縮めた。 そこに落ちていたもの、それは人の変り果てた姿だったからだ。 腹部を抑えていて、心臓を何度も刺されたようだった。 止まらぬ涙に歪む視界でその人物を再度覗けば、私の学校の制服を着ていた。 そして顔をよくみれば、それが見知った人物の顔である事もわかった。
「さ……佐々川く……っ」
私は横たわる人物の名前を呼んだ、返事はない。 クラスメイトの男の子で、名前は佐々川 暁。 人懐こくて、いつも元気で、クラスのムードメーカーだった佐々川君。 孤立してる子を放っておけなくて、私にもよく声をかけてくれる一人だった。 この間は、サッカー部の部長を任されたと、あんなに嬉しそうに話していたのに……。
「誰が……こんな酷い、事……っ」
立ち上がる事はまだできなかったが、私は佐々川君の傍に寄った。 制服が佐々川君から流れでた血でぐちゃぐちゃになる。 それでも開ききった佐々川君の目を、閉じてあげたかった。 だけどその後、どうしたらいいかわからなくて、その場で泣いていた。 まだ殺人犯が近くにいるかもしれないとか、そういう事を考えていなかった。
 「のる?」
聞き覚えのある声が私を呼んだ。 大好きなあの声だ。 私はいてもたってもいられなくて、助けを求めるようにその方向を見上げた。
「律君……っ! 佐々川君が……」
私は言葉を切った。 半壊した屋根の隙間から月明かりに照らされた彼が映ったからだ。 腰が抜けたままのその状態で私は足と手を使って後退した。
「どうかしたの?」
彼は笑みを浮かべて私を見ていた。 右手には簡単に手に入るとは思えないナイフが握られていて、ナイフも彼自身も大量のどす黒い血に濡れていた。 だけど私は、彼がそんな事をするなんて信じられなくて、恐怖で震えながらも普段の調子を思い出しながら聞いた。
「律君……怪我……してるの?」
私が苦しく笑うと彼はキョトンとした。
「あぁ……」
何かを理解すると顎をひいて、見下したような不敵な笑みを浮かべる。 そして、『ククク……』と喉を鳴らすようなそんな笑い方をした。
「僕が怪我なんて、するわけないでしょ?」
血の気が去るってこういう事を言うのだと思った。 彼はゆっくりと私に歩み寄って来る、それが怖くて私は彼との距離を見ながら動く足で後へと下がってく。 だけど自動車一台分のガレージがそれほど広いはずもなく、私はすぐ壁に追い詰められた。
「こ……来ないで……っ」
私を壁に押さえつけて顔を覗き込む彼、 右手に握られたナイフの刃ではない面で首に押し当てられて、 冷たくて、血が滴ってきて、ゾクゾクと寒気が走った。 もう殺される、そう思うと怖くてかたく目を瞑った。
「……冗談だよ」
彼はそう言うと私の目元を舐めた。 瞬間また身体が震えて、訳がわからず彼を怯えた顔で見つめた。 私の様子に彼はクスクスと笑うとナイフをしまった。
 「手荒な真似はしたくないんだ、だから僕に従ってくれないか」
彼はそう問いかけながら、佐々川君を黒いビニール袋に入れると、ガレージにあった少し大きな物置に放りこんだ。 何を要求されるかわからない、だけど従わなかったら殺されるかもしれない。 私はガタガタと振るえる身体を抱き締めながら、彼を見ている事しかできない。
「のる、これはゲームだ。先生が僕を捕らえる事ができるかどうかの」
「ゲームって……そんな事の為にっ佐々川君を……っ」
その言葉に再び涙が溢れてきた。 彼は私を見ようとはせず、黙って血のついたナイフを拭いていた。 そして私も彼を見ようとしなかった。
 しばらくして、背を向けていた彼が口を開いた。
「……のるは、先生に"僕が人を殺した"って伝えればいいだけ」
「え……?」
そんな事をさせて彼に何の得があるのだろうか、私は不安げに疑問の声をあげた。
「早く信用してもらえれば、クラスメイトを助けられるよ、どうする?」
そこまで言うと彼は振り返った。 さっきまでの見下したような不敵な笑みなどではなく、今日の昼間に見た悲しげな表情。
「そんな事をして、律君に何の得があるの……」
私はとうとうその疑問をぶつけた。
「損得の問題じゃないんだよ……どこまで自信があるのか……そう、どこまで過信してるのか」
彼はそこまで言うと口を閉ざした。 そして、私には意味が解らなかった。
「忠告しとくけど逃げたりしたら許さない、無論休学も、休むなら保健室で休んでよ」
彼はそう冷たく言い放つと鞄の中からペットボトルを取り出した。
「解ってると思うけど学校の奴ら以外に洩らすのもダメ」
そしてまた鞄を探りだした。 何かを取り出すとそれを私に差し出た。 そのジッパーのついた袋の中には一粒の白い錠剤が入っている。
「これ飲んで僕に従うか、全員殺してくるまで監禁されるか、選んで」
従っていれば監禁はしないと言った、それに彼を止める事ができるかもしれない。 そこまで考えが及ぶと、私はゆっくりとその袋に手をのばした。
「……そう、飲むんだ」
彼が冷めた目でそう言うと、私は不安を感じた。 この錠剤は一体なんなのだろうか、まさか毒? 手の平に錠剤をのせてから躊躇した。
「やめてもいいんだよ?」
彼はそう笑うとその錠剤を自分の手に戻した。 本当に彼はどちらでもいいのだろう、そういう余裕を持っていた。 私は横に頭を振った。
「飲むから……だから、返して……っ」
「そう、じゃあもう躊躇しないで」
そう言うと彼は錠剤ごと水を自分の口に含み、私の顎を掴むと深く口付けた。 口の端から水が漏れ、錠剤を飲み込むのも苦しかった。
 私が錠剤を飲んだのを確認すると、彼はようやく解放した。 私は肩で息をしながら、口の端を拭った。
「よくできました」
そう彼は冷たく笑った。 それを私は力無く見つめていたが、その時異変は起こった。 頭がクラクラして苦しいような、眠いような、そんな感覚に襲われた。 私は意識を手放しそうになりながら彼を見た。
「……この毒は三ヶ月かけて全身に回っていく、解毒したかったら裏切らないで」
そういうと彼は額に口付けた。 私はそういう事か、と妙に納得した。 身体は焼けるように熱くて、電流が流れるようにビリビリと痺れて、 呼吸も荒くなる一方で、それ以上何も考えられなかった。 そしてその場に倒れるのと同時に私は意識を失った。
「さあ、殺人ゲームをはじめよう」
そう呟く彼を赤く目映い月は怪しく照らした。

...2008.03.31