Trente et Quarante

第九話:新しい約束/2

 今までの事を思い返しながら、リオネルは玉座の間から柩を引きずりある場所に来ると、柩を開けた。
 外気に触れて冷気が漂う、その中にソレイユはいる。
 リオネルは彼の頬に触れると、想像よりまだ温かい事に何故か安堵していた。
 自分の中にある矛盾に戸惑い首を横に振ると、ソレイユを抱えだす。
 そして自分の服が血で穢れるのも気にせず、彼に赤く染まったウェディングドレスを着せ、髪を整えて改めてヴェールを被せた。
 そうして現れた深紅の花嫁、もとい王妃の亡霊にリオネルは満足したように微笑みを浮かべると、再び彼を柩に横たえる。
「この場所は構造上火が回りません、だから美しいまま眠ってください」
 リオネルは微笑むとどこから出したのかまた花を納めていく。
「……置いてきた、もう一つの理由はね、陛下」
 少し表情を曇らせるとリオネルは遠くを見つめ、聞いているはずのないソレイユに言う。
 眠りに落ちたソレイユは答えない、そして答えも期待していなかった。
「僕のした事を知れば、貴方と同じようにあの子も苦しむ事になるでしょう?」
 リオネルは微笑みながら自嘲気味に言う。
「貴方は気付かなかったけど、あの子は貴方を愛しているのだから……」
 今どれだけ身勝手な行動にでているのか、それを理解しているかのように涙が零れる。しかし彼はもう止まらない。一度形を変えた計画も、彼が自身の呪いに屈した時からまた元に戻ってしまっていた。
 だけどそれでも一つだけ、違う事がある。
「本当は、王座を奪い返したかったのですがね……でも」
 リオネルは一度言葉を切った。
「僕も……貴方と共に参りましょう」
 苦笑しながら言い柩の蓋を閉じると、また一つ爆発音が響き渡る。
 城が揺れる中、リオネルは悠然と歩きだした。

...2012.08.21